努力と可能性-『こどもの一生』を観て

先日、松島聡くん初主演舞台『こどもの一生』を観賞してきました。

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『ブライトン・ビーチ回顧録』ぶりの東京芸術劇場プレイハウス。

絶賛就職活動中でお前ブログなんて書いている暇ないだろうという状況ですが、どうせ書くなら記憶が新しいうちにと殴り書きしてしまいます。

以下、ネタバレあり

 

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中島らも氏作の原作は手に入れたもののあまり読む時間がなく、事前情報は起承転結でいうところの「起」しか知らない状態で鑑賞。

原作や舞台を鑑賞(読破)した人からは「ホラー」「難しかった」などの声がちらほら聞こえていて、1度で理解できるのか少し不安でした。

結論から言うと、原作を読破していなくても楽しめました。登場人物も1人1人ピックアップされるシーンがあるから覚えやすい。設定も原作と全く同じではなかったし(聡ちゃん演じる柿沼は原作だと40歳前後だったはず)。ただ、主人公たちが施されるMMM療法に関するシーンが舞台では少なく感じたので、登場人物&設定の概要を把握するために少し原作をかじっておくのはアリだとも思います。100ページくらいまでで大丈夫。

正直、原作未読で舞台でハラハラドキドキを楽しみたい方には、「読破する」のはおすすめしません!!「そう来るか!!」という展開が終盤多かったので…。

 

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聡ちゃんの話をしましょう。

聡ちゃん、

すごい!!!!!!!!!!!!!!!!!!(急な語彙力喪失)

以下、演技経験なんて0の大学生が偉そうに話します。

まず声がよく通る。顔が見えない声だけのシーンでも表現が細かく、柿沼という役のパーソナリティがよく伝わる。

表情が豊か。特に眉毛がよく動いていたのが印象的でした。物語の序盤、三友を仲間はずれにしようとする場面。ノリノリの藤堂・淳子・亜美に対し、従属する上司に対してそのような態度をとることにどこかためらいを隠せない柿沼。3人に合わせようと気丈にふるまいつつも現実世界とのギャップを感じ葛藤する様がよく表れていました。…評論家気取りやめな。

そして動きのキレ。緩急のついたダンスと自分自身の魅せ方が上手い聡ちゃんの魅力が存分に活きている演出でした。あんなに踊ると思わなかった。群舞の後ろでタイトルやキャスト名が映し出されるオープニング、映画のオープニングのようでワクワクした…!

また、今回のストーリーに出てくる「クライアント」は心にそれぞれ病を患った人物。休養の経験がある聡ちゃんだからこそ、登場人物に共感できる部分や醸し出せる表現もあるのかもしれないな、と勝手ながらに考えてしまいました。

 

そんな初主演とは思えない堂々とした演技を繰り広げていた聡ちゃ…いや、松島聡さん。でも、カテコではいつもの「聡ちゃん」でした。

この、役から本人そのものに戻る姿がオタクはだ~いすき!(デカ主語)

捌けるときには上手下手それぞれに手を伸ばして共演者の方々を立てるような仕草をし、観客席には笑顔で丁寧に手を振る。確か2回目の時に院長役の升毅さんとなにかキャッキャしていたのが微笑ましかった。演者同士の絡みを垣間見るのがオタクはだ~(略)3回目の捌け際には劇中に登場する「ピロピロリーン」の仕草をしていたのがかわいらしかった。

急な代役でここまでこなすことができ、しかもまだ開幕して数日なのに非の打ち所のない出来。大千秋楽の頃にはどこまでパワーアップしているのだろう…。

これからどんどん演じる場が増えて、もっと魅力が世間に広まるといいな。

今回の主演はもちろん素晴らしかったですが、個人的には地上波の連ドラで物語のキーマンとして出演してほしい。犯人とか。結構シリアスな作品も向いてると思う。藤堂を疑って言い争いになるシーン、迫力あったな…。

 

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舞台全体の感想も少し。

とにかく、独特の世界観を生み出す演出の数々に圧倒されました。灰色を基調とした無機質なセットなのに、戦禍、病院、洞窟…と雰囲気がコロコロ変化する。小道具だけではなく、ダンサーの方々の動きでもそれが表現されていて、見応えがありました。ミュージカルに近づきすぎないあくまで演出としての「ダンス」は見やすく、かつ奇妙な雰囲気の創出に一役も二役も買っていたように感じます。

役者もセット転換の役割を担っていたり、1人2役を演じたりしており、相当な稽古を積んだのだろうなと感心してしまいました。舞台を観るたびにあれだけのセリフや動きを暗記できる役者の凄さに驚かされる。こっちは出会った人の名前すら3分で忘れてしまうのに…。あと、セットの壁の穴に入るようにテーブルを押し出すの、引っかかって「ドン」と音がしたら恥ずかしいだろうな~なんて思ってしまいました。難しそう。

パンフレットも購入したので、後日インタビューなどにゆっくり目を通したいと思います。

 

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笑えて、怖くて、見応えのある作品でした。

結局、三友はどうなったんだろう。私は彼だけは山田ではなく院長&井手が本当に殺したのではないかと思いました。しかし、一緒に鑑賞した妹は「三友だけ山田のおじさんのことを信じたままだったんじゃない?(だから山田に与えられた傷が消えなかった)」と推理していて、そっちの方が一理あるかもな…とも考えています。原作を読めば解決するかな。最後1人だけ早く「おとな」に戻ってしまった柿沼もどこか切なかったな。

 

聡ちゃんが今までの活動で積み重ね、本作品でさらに磨き上げたスキルや才能の今後に期待しています。

 

さて、聡ちゃんの勇姿からパワーを貰ったので、私も改めて就職活動頑張ります。

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就職試験に落ちまくっていたら、三友みたいなブラック社長に拾われて社畜にされてしまうかもしれないし。